「自分に合った場所で、自分らしく生きる」

11月4日、西箕輪中学校体育館において、

育成会主催の今年2回目となる「地域の先輩のお話を聴く会」が開催されました。

今回の講師は、上戸区にお住まいの米本真之さんです。

西箕輪地区の農業を牽引している、第一人者です。

現在は、株式会社 米本りんご農園の代表であり、

十数品種のりんごを栽培しています。

山小屋で知り合った奥さんと

米本さんがこれまで歩んできた道のりや、

さまざまな出会いを通して見つけた自分らしい生き方について、

お話しいただきました。

講演する米本真之さん

好きなことを求めて、山小屋の暮らしへ

子どもの頃から体を動かすことが好きだった米本さん。

高校卒業後は、好きな服に囲まれて働きたいと古着店に就職しました。

しかし、売上を上げるために、

本当に必要としていない人にも商品を勧めなければならないことに、

次第に違和感を覚えるようになります。

そんな時、子どもの頃に親に連れて行ってもらった山を思い出し、

長野県の乗鞍岳にある山小屋で働き始めました。

山小屋の仕事は、山を訪れる人に部屋や食事を提供すること。

必要としている人に必要なものを届ける。

そのシンプルな仕事が、自分にはとても心地よかったといいます。

水が貴重で毎日お風呂に入ることもできず、

携帯電話もつながらない不便な生活でしたが、

自然に囲まれた暮らしに大きな幸せを感じていたそうです。

至福なとき
布団の天日干し
「乗鞍岳権現池」

海外への旅で、自分自身と向き合う

4年間の山小屋生活を経て、将来について迷い始めた米本さんは、

貯めたお金を手に海外へ旅立ちます。

トルコではスリに遭い、

パスポートもお金もすべて失うという大変な経験もしました。

その後、ブルガリアで出会った自転車旅行者に刺激を受け、

ドイツで自転車とテント、寝袋を購入。

目指したのは北極圏でした。

自転車で旅を続け、実際に北極圏を越え、

太陽が沈まない白夜を自分の目で確かめることができました。


一人で自転車を走らせる旅の中では、

「自分はどんな人間なのか」

「これから何をして生きていけばよいのか」と、

自分自身について考える時間がたくさんあったそうです。

農業との出会い、そして新しい夢

28歳の時、海外で働きながら暮らせるワーキングホリデー制度を知り、

ニュージーランドへ渡ることを決意します。

渡航資金を貯めるため、

長野県川上村でレタスの収穫の仕事を経験しました。

朝3時半からヘッドライトをつけて働く大変な仕事でしたが、

朝日が昇るにつれて体が温まり、

外で働くことの気持ちよさを知ったといいます。

「28歳にして、初めて農業っていいなと思いました」

長野県川上村のレタス畑

ニュージーランドでは、リンゴ農園の仕事を探すため、

自転車で毎日約100キロを走り、農園を一軒ずつ訪ね歩きました

何度も断られ、最後に訪れた農家でも仕事が見つからず、

帰ろうとした時のことです。

喉の渇きに耐えかねて近くの家を訪ね、

水をお願いしたところ、

事情を聞いた家の人が、

チラシの裏に手書きの地図を描いて近くの農園を教えてくれました。

その農園で、ようやく仕事を得ることができたそうです。

ダンさん親子(ニュージーランド)

その後、オーストラリアのリンゴ農園で1年間働き、

収穫だけでなく剪定なども経験しました。

農園主のラルフさんは、

米本さんを単なるアルバイトではなく、

農園の仲間として接してくれました。

リンゴづくりについて話を聞くうちに、

リンゴそのものへの興味が深まり、

人生で初めて「自分もリンゴ農家になりたい」

という夢が生まれたのです。

in オーストラリア
収穫の喜び
りごの剪定を学ぶ
ラルフ夫妻

たどり着いた伊那の地で、リンゴづくりを始める

帰国後、長野県内のさまざまな産地を訪ね歩き、

最後にたどり着いたのが伊那の地でした。

山々に囲まれた美しい風景を見て、

「ここでリンゴをつくろう」と直感したそうです。

その後、地元のベテラン農家のもとで2年間修業し、

11年前にこの地でリンゴづくりをスタートしました。

最初は小さな畑からの出発でしたが、

少しずつ規模を広げ、

現在では当初の約10倍の広さになっているそうです。

上戸のりんご畑

「適地適作」――自分に合った場所を見つける

講演の最後に、米本さんが伝えてくださった言葉が「適地適作」です。

土地の気候や風土に合った作物を育てると、作物は元気に育ちます。

それと同じように、

人間にも自分に合った場所や仕事があるのではないか、と話されました。

そして、こんな言葉を贈ってくださいました。

「生まれてくる場所は誰も選べないけれど、

生きていく場所は自分で選ぶことができる」

古着店での仕事、山小屋での生活、海外への旅、そして農業。

さまざまな経験や人との出会いが、今の自分につながっているといいます。

「いつか、自分は何のためにいて、

どこで何をすればいいのだろうと迷った時には、

この『適地適作』という言葉を思い出してもらえたらうれしいです」

思わず聴き入ってしまう、講演でした。

自分らしい生き方を見つけるために

自分の好きなことや夢中になれることは、

すぐには見つからないかもしれません。

米本さんのお話から、いろいろなことに挑戦し、経験を重ね、

人との出会いを大切にしていく中で、

自分に合った場所や生き方が少しずつ見えてくるのだと感じました。

米本さんは上戸区に暮らし、地域の一員として活躍されています。

今回のお話を通して、地域にはさまざまな経験や知恵を持った先輩方がいて、

その生き方や思いに触れることが、

子どもたちにとって大切な学びにつながることを改めて感じました。

上戸環境保全会としても、地域の自然や環境を守る活動を軸にして、

こうした地域の人と人とのつながりや、

世代を超えた交流を大切にしていきたいと思います。

子どもたちが地域の先輩方の生き方に触れ、

自分の将来や生き方について考えるきっかけになればうれしいです。

米本さん、貴重なお話をありがとうございました。

「生まれてくる場所は誰も選べないけれど、生きていく場所は自分で選ぶことができる」

Follow me!